「彼らが放出する無限のエネルギーと瞬時に伝わる熱狂が輝き続け、
根底に流れるオーガニックなライヴ感はパーティ・ムードにピッタリ」- ミックスマグ誌
ヤング・パンクス(ハル・リットソンとネイサン・テイラー)はダンス・ミュージック・シーンに潜入したパンキッシュな回し者だ。
クラブ・カルチャーの可能性を存分に享受しつつ改革を謀っている。
「その名に恥じない説得力のあるヤング・パンクス。彼らならKLFよろしく、
ダンス・ミュージックの解放戦線で活躍してくれるに違いない」- ビルボード
ロンドンのブレイクス・シーンとインターネットのマッシュアップ・シーンというツイン・ワールドから2003年に浮上したデュオは、出現と同時に一気に注目を浴びた。きらびやかなクラブ・プロダクションと、まばゆいばかりの音楽性とを融合し、風刺の効いたポップ・カルチャー精神で、ダンスフロアを賑わすヒットを続々と放出。それと同時に、ダンス系グループのあり方を、じわじわとくつがえしている。BBC Radio 1に押されて果敢にメインストリームへ参入。白ジャケ盤を出してからわずか半年で、ヤング・パンクスはRadio 1のリスナー票により、ブートレグ・リミキサー・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、EMIと万単位の金額で契約し、オッズ25対1でクリスマスのナンバー1候補に挙がり、しかもそのディスコ・ハウス・ナンバーが、いかにもな難解な形式でテレビCMをサンプリングしていたので、本当に真面目にやっているつもりなのかと世間が疑問に思ったほどだ。
「ヤング・パンクスが音楽における“クール”を再定義」- EQマガジン
その後、何年にもわたり、ヤング・パンクスはリミキサーとして、ノーマン・クック、シザー・シスターズ、トム・ジョーンズ、デ・レイシー、ティナ・ターナーなどを手がけて名を上げつつ、クラブ界にワイルドカードを何枚も投じるような曲を絶え間なく作り続けてきた。「コール・オン・ミー」以前に80年代のポップ・ヒットをサンプリングしていたのも功を奏したし、マイロの「ロックンロールを破壊せよ」を“くそセレブを破壊せよ”という意味の超辛口パロディにしたのは、知的レベルが低下の一途をたどるポップ・カルチャーに対する挑戦だった。若きスティーヴ・アンジェロや、80年代のアイコン、ハワード・ジョーンズと、同じ曲でコラボレートもしたヤング・パンクスは、メタル界の伝説的シュレッダー、ガスリー・ゴーヴァンなど、テクニカルなインストゥルメンタリストをエレクトロのバックに参入させて、マッシュアップ・ミュージックの領域を押し広げようと常に精進しながら、ジャンルを交錯させ、激しく異なる音楽形式を予期せぬ手法で織り交ぜている。
「ブレイクス、ポップ、ディスコ、ドラムンベース、オペラ、サーフ・ミュージックのすべてが放り込まれて、決してやむことのない、クラクラするほどの衝撃を生んでいる。これを流せばパーティーは盛り上がること間違いなし」- IDJ
2007年のデビュー・アルバム『Your Music Is Killing Me』(Ultra / Avex / Central Station)をリリースする頃には、あらゆるところに出没していたヤング・パンクス。日本のアリーナで1万5000人を前にステージに立ったかと思うと、BBCのニュース番組『Newsnight』で、BBC Radio 4の海上気象予報をサンプリングしてラップにアレンジしたハウス・ナンバーを披露。へヴィ・メタルのギター・ソロだってやっていた。『マイティ・ブーシュ』のスタッフ・チームに作ってもらったビデオだってあった。
2009年のアルバム『Mashpop and Punkstep』では、マッシュアップに根ざした彼らが、さまざまなジャンルを絶え間なく融合し、モーフィングしている。また、インディー・ヒップホップ界のドン、カウント・ベースDとのコラボ「Ready For The Fight」は、ゲーム『ファイトナイト ラウンド4』のテーマ音楽としても、ミドル級チャンピオン、アルツール・アブラハムの入場曲としても、世界中にとどろいた。
BBCのラジオ番組『Electric Proms』でディジー・ラスカルのライヴ・バンドおよびこの回のミュージカル・ディレクターを務めて好評を博したヤング・パンクスは、その後、2011年になって、またもや方向転換。今度はアマンダ・パーマーとピーチズを巻き込んで「Map Of Tasmania」を作っている。フェミニズムの匂いがプンプンするこの曲。なんと、テーマは陰毛を生やす自由についてだ。
そう、ヤング・パンクスは変幻自在で神出鬼没。何が飛び出すかわからない!
そしていよいよ2014年、3rdアルバム『All These Things Are Gone』がリリースされる。喜びと哀愁が織り成すこの旅路、時の流れにまつわるテーマや、進歩の名のもとにカルチャーから知らず知らずのうちに失われていくものを探るアルバムだ。14分間のタイトル曲ではまさしく、今は見かけなくなったものを60品目以上も淡々と並べながら、ビラヴドやセイント・エティエンヌなど90年代のアーティストによる至福のハウス・ミュージックに触発された、流れ続ける音風景を構築している。本作でヤング・パンクスは他にも、音楽史におけるさまざまな失われた年代へと、時空を旅しながらインスピレーションを得て、各時代のスタイルでレコーディングおよびプロデュースをしている。しかも、機材まで100%、その時代のものを使用した。そのうえで“自分たちをサンプリング”して、ビシッとした70年代ジャズ・ファンク調の「Harlem Breakdown」や、ガツンとした30年代ビッグ・バンド調の「Kowloon Kickback」など、新たな楽曲を斬新に生みだしている。
「曲はどれも各時代を彷彿とさせるほど本格的でいて現代にマッチする。軽妙かつ快活。プロデュースも見事。本物志向で豊かで鮮やかなサウンドだ。過去の作品にも一貫してあった狂熱のエネルギーが、創造と匠の粋へと昇華した」- Notable Danceブログ
「アルバム全体を通して伝わってくる壮大な労力と、演奏や曲作りに対する熱意は圧巻だ」- ミュージック・テック・マガジン
ヤング・パンクスとは別に、ハル・リットソンは、ダンスやアーバン・ミュージックの計40曲以上を作曲、プロデュース、演奏してきた。手がけたアーティストの名を挙げればキリがない。チェイス&ステイタス、ディジー・ラスカル、ブラック・アイド・ピーズ、ルディメンタル、リル・ウェイン、NAS、プシャ・T、リズル・キックス、アヴィーチー、クリス・マリンチャック、ゴティエなどなどだ。一方でネイサン・テイラーは、ブリストルを拠点とする機関Situationsを通じて、最新鋭のアート・プロジェクトを世界に発信することに貢献している。また、二人が創設および運営しているレーベル、MofoHifiとHeavy Discoは、フォナットやボビー・タンクといった優秀なプロデューサーを輩出してきたことでも名高い。